水源の里・久多(3) 自立支援に強いニーズ 近隣の助け合いは今も
日本の社会保障は、医療や介護など、保険等の給付と市場経済を核としたものが多くあります。しかしながら、山間地域や過疎地域では、市場経済による収益性は厳しく、支援にあたる事業所に乏しい状況があります。このため、市街とは異なる地域ごとの公的な代替支援が求められるところですが、なかなか難しい現実があります。
そして、西側の花背・広河原方面への峠または東側の滋賀県経由で京都市街から約1時間、山間地域の久多も例外ではありません。
久多地域の特徴の一つとして、自助や互助の力が抜きんでていることがあります。本人の持てる力は生活の様々なことに最大限発揮され、生活をするため工夫されています。しかも、「たいしたことじゃない」と笑顔で。「この地域で自分の力で生活したい」という力を感じます。市街地域で似た状況であれば、様々な受動的支援を必要としたでしょう。そして、古き良き日本の助け合いも残っています。
ある居宅を訪問した際、庭を掃除されており、親族だろうと御挨拶したら、近隣の方でした。「昔とても世話になったので掃除を」と。
支援のため、ご本人に話を伺うと、「なるべく自分でしたい、この地域に住み続けたい、解決する方法はないか?」と。離れて暮らす家族は「週1回ぐらいしか来られないので、見守りをしてほしい」「生活を少しでも支えてあげてほしい」と。話を聞いたとき、このニーズはまさに自立支援そのものではないかと、ハッとさせられました。
近年、行政主導で地域包括ケアシステムの重要性が掲げられています。全国的に様々な活動が取り組まれていますが、このように力を発揮できている地域は少ないのではないでしょうか?
人や風土、まさに日本の原風景そのものである豊かな久多。訪れるたび、都会的な豊かさや充足が向かうべき方向なのか考えずにはおられません。ひょっとしたら、社会保障の過不足や給付切り下げの議論ではない、少子高齢社会の課題解決の糸口が、久多にはあるのかもしれません。
水源の里・久多は、3回にわたって掲載しました。
水源の里・久多(1) 茅葺の民家、四季の景観 高齢化率61%、進む過疎化
水源の里・久多(2) 豪雪の冬は脱出する人も ADL向上が意欲生む