歩行障害の種類とその原因とは?
こんにちは、御所南リハビリテーションクリニックです!
多くの方が特に意識することなく、日常的に「歩行」を繰り返しています。
その「歩行」に違和感があるないし生じたと思ったら「歩行障害」の可能性があります。
歩行するには様々な体の機能が関係し、主に脳や神経、筋肉などが関わっています。
そのため歩行に対する違和感が似ていても、障害を引き起こしている原因により対処方法も異なります。
今回は「歩行障害」の種類や症状、原因についてご紹介します。
歩行障害とは?
「歩行障害」とは、歩行に必要な体の各部位が先天性または後天性による何らかの障害の影響を受ける事で、歩行困難もしくは全く歩けない状態のことをいいます。
「歩く」ためには、ただ単に足の筋肉を使うだけではなく、脳が命令を出し、その命令を伝える神経の働きが必要になります。
そのため、歩行障害の原因には筋肉組織や骨組織そのものの損傷だけでなく、脳組織、神経組織の影響を受けているケースもあります。
また歩行障害は、脚全体が正常に動かせない場合と、膝や足首など特定の部位の動作が不完全で引き起こされる場合とがあり、それぞれのケースに応じてリハビリ内容を考えていく必要があります。
歩行障害の症状や種類
歩行障害は、症状や種類によって診てもらう診察科も変わります。
代表的な歩行障害のパターンと診療科の目安をご紹介します。
脳神経疾患に多い歩行障害
痙性歩行
つま先をひきずるように歩きます。
はさみ足歩行
両足をはさみのように組み合わせて歩きます。
鶏歩
足首が上がらず垂れたままなので、足を高く持ち上げ、つま先から投げ出すように歩きます。
動揺性歩行
腰を左右に振りながら歩きます。
小刻み歩行
前かがみ・小刻み・手をあまり振らずにあるきます。
失調性歩行
ふらふらとしていて、不安定でぎこちなく歩きます。
足元を見ながら両足を開いて、かかとを打ちながら歩きます。
これらの歩行障害が確認された場合は、まず内科で受診して検査してもらうと良いでしょう。
また、総合病院など複数科の受診ができる医療機関の整形外科に相談してみるのも一つです。
すでに頭部の痛みや胸部の違和感がある場合は、それぞれ直接脳外科や循環器内科の受診をオススメしますが、迷う場合は「内科」「整形外科」が一番の窓口になります。
骨や関節系に多い歩行障害
間欠性跛行
歩行を続けると下肢の痛みと疲労感が強くなり、足をひきずるようになりますが、休むと再び歩けるようになります。
その原因は次の二つに分けられます。
「神経性」:腰椎などに疾患があり特定の方向に体を移動すると痛みが和らぐ
「血管性」:血流の活性化を緩やかにする(歩くのをやめるなど)と痛みが和らぐ
間欠性跛行は、心臓血管外科や循環器科および整形外科を受診してください。
墜落性跛行
左右の足の長さが異なり、片方の足が地面につくときに墜落するように落下する歩き方をします。
まずは、整形外科を受診してください。
心因性歩行障害や原因不明の歩行障害
心因性歩行障害
身体機能には異常がない精神疾患で、運動機能や感覚機能検査で問題無いが歩けなくなります。
身体機能に問題がなければ精神科に受診することをおすすめします。
受診科は症状により変わりますが、体に異変がある場合には脳外科や神経外科への早めの診療が必要です。
歩行障害の原因が脳、神経、脊髄、筋肉などの病気であるケース
歩行障害を引き起こす症状についてみていきましょう。
歩行障害の多くが、その症状のリハビリだけでなく、原因を取り除く根本的治療と併用することで軽減される傾向にあります。
歩行障害の原因になる代表的な病気には次のようなものがあります。
脳に関わる病気
脊髄小脳変性症、多系統萎縮症
小脳や脳幹が萎縮することで歩くことが困難になる病気で、詳しい原因は明らかになっていません。
歩行障害や筋肉の硬直、血圧の制御困難などが発生します。
脳卒中
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血など脳にトラブルが起きると発生します。
後遺症として歩行障害や運動障害、言語障害が残るのが特徴です。
ウェルニッケ脳症
主にビタミンB1の欠乏症により起こります。アルコールの飲み過ぎでも発症することがあります。
言語障害や眼球運動の障害、運動障害が起こり失調性歩行の症状が表れます。
動脈硬化(血液・血流)に関わる病気
閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう)
手や足の血管が詰まり、狭くなることで血液の流れが悪くなり、栄養や酸素を充分に送り届けることが出来なくなり、歩行障害が起こります(血管性跛行)。
特徴的なのは、歩行中や重い荷物を持った場合など、患部に負荷がかかったときに強く症状が出る「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」であるケース(だるさ・痛み・こむら返り)が多い点です。
足に血流をたくさん必要とする動作を止める(歩くのをやめる・負荷を取り除き安静にする)と痛みは引き、歩行障害も軽くなります。
ただし、根本的な解決策としては動脈硬化そのものを改善する必要があります。
神経に関わる病気
腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)
腰部の骨、関節、椎間板、靭帯に異常が起き、神経が圧迫される病気です。
この病気では長い距離を続けて歩くことが出来ません。
腰部脊柱管狭窄症でも「間欠性跛行」が起こるのが特徴です。
腰部脊柱管狭窄症は神経組織そのものに損傷が見られるため、単に歩行を休んでも足の痛みやしびれはとれません。
しかし腰を前かがみにし、しゃがんでいる状態であれば神経の圧迫や変形が落ち着くため痛みが和らぎます。(神経性跛行)
後縦靭帯骨化症(こうじゅうじんたいこつかしょう)
背骨の中を通る後縦靭帯が骨化することで神経や脊髄が圧迫され神経の働きが低下し、手足のしびれや足のつっぱりなどの症状があり、つまずきやすく、歩行障害が起こります。
歩行障害の原因が筋肉や骨そのものの疾患ケース
歩行障害を引き起こす筋肉や骨組織由来の疾患には次のようなものがあります。
筋肉に関わる病気・症状
パーキンソン病
脳に関わる病気であり筋固縮ならびに歩行・姿勢反射障害です。
原因は不明で、手足のしびれや筋肉の萎縮により歩行困難で運動障害が起き、主に50代、60代で発症する確率が高い病気です。
サルコペニア
高齢者に多く、栄養状態の影響や、運動量の低下により筋組織が細く弱くなる状態の総称です。
疾患ではないものの筋組織が弱った状態では十分な歩行ができず、いざ動こうとしたときに転倒などの原因になることも多いのが特徴です。
症状の軽減には普段から食生活ならびに運動習慣を身に付けることが重要です。
筋肉・骨の双方が関連している疾患
足の変形
関節リウマチや先天性内反足、外反母趾などの足が変形する病気も歩行障害の原因になります。
外反母趾などは事前に予防出来るので、つま先のゆったりした靴を履いたりすることで普段から気をつけることが出来ます。
外傷
骨折や筋断裂などの影響を受け、歩行障害が出ることがあります。
脳組織や神経組織に問題がない場合は、リハビリ次第でその症状を改善できるケースも多いのですが、その損傷の程度や損傷範囲などによって強い後遺症が残ることもあります。
その他、外傷により脳や神経組織が影響を受けるほどの強いダメージを負う場合は筋肉・骨組織に問題がなくても歩行が困難になることもあります。
歩行障害のリハビリ方法
歩行障害は、原因に合わせたリハビリテーションを行うことで効率的に歩行に必要な筋力や関節の柔軟性を保ち、スムーズな神経の伝達ができるようになります。
脳卒中や神経疾患のリハビリは急性期から
長く寝たきり状態が続くと、筋肉の衰えや関節の拘縮(硬く動きが悪くなること)が目立ち、歩行障害を引き起こす原因となります。
これを防止するために「マヒの起きていない側の腕、足を動かす」「姿勢を整え、段階を経てベッドの上で起き上がる」といった運動を医師の指導の下で、集中治療室にいるうちから開始します。
急性期リハビリについてはこちらもご覧ください。
急性期リハビリテーションとは?リハビリテーションの基礎知識
吊り下げ式免荷装置とトレッドミルによる歩行訓練
近年の脳卒中や脊髄損傷による歩行障害のリハビリ方法として注目が集まっている方法です。
トレッドミル(ランニングマシーン)の左右から金属製のポールをたて、吊り下げ式のハーネス(固定ロープ)を体に装着したうえでウォーキングを行います。
ハーネスは自重を支え、転倒防止にも効果があるので、従来の平行棒を使用した歩行訓練より効率よく歩行訓練ができます。
動脈硬化による歩行障害と運動
動脈硬化による歩行障害の場合、血液不足の足への血流を増加させ、血液中の酸素の利用効率を高めることで持続的な歩行が可能となります。
先ほどご紹介したトレッドミルによる運動や踏み台昇降運動など足全体を使う運動(運動負荷)を取り入れるのが一般的です。
ただし、動脈硬化が進んでいる状態では、他の合併症を持っている可能性があり、痛みや症状に応じて少しずつ取り入れることが大切です。
機能的電気刺激(FES)を使う
慢性的に歩行障害が起きている場合、電気刺激により筋力のアップを試みるのも有効です。
ただし効果は持続しないため、複数回の施術をする必要があり、筋力トレーニングなどと併用することになります。
症状によって改善策は様々なので、精神的にリラックスした状態でリハビリを行える環境づくりを心がけることも重要なポイントになります。
歩行障害の種類を知り、適切なリハビリを行いましょう
歩行とは、長い進化の過程で人間が培った動作の一つです。
歩行障害が起きた場合、どのような病気により症状が出ているかによってリハビリの方法なども変化します。
単に筋力や骨の修復だけではなく、根本的治療と合わせて治療を続けることが患者様のQOL(生活の質)をあげるための大切なポイントになります。
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