握力が低下したときのリハビリ方法とは?
こんにちは、御所南リハビリテーションクリニックです!
今回は「握力低下時におけるリハビリテーション方法」についてのお話です。
私たちは毎日無意識のうちに、その時々のシチュエーションに合わせて腕や手ならびに指先を動かしています。
たとえばご飯を食べる際は、箸を使うときと器を持ち上げるとき、パンを摘まむときなど、それぞれの動作に合った力の強さや腕や手首ならびに指の角度を駆使して一連の動作を生み出します。
ところが病気やケガの後遺症により握力が低下すると、十分な調整ができなくなりそれぞれの作業が困難になります。
握力の回復に関わるリハビリテーションは、手先の作業回復だけではない他の効果も得られています。
握力に関するリハビリテーションの方法と重要性について見ていきましょう。
握力が低下するとADLの低下にもつながる
日常生活動作:ADL( activities of daily living)は、日々の生活を営む上で不可欠な基本的行動への指標です。
食事や排せつ、入浴などの日常的な動作には複雑な動作が組み合わされているケースが多いのですが、握力が低下していると次のような動作が困難になります。
・重いものを長時間持てない(買い物など)
・瓶やペットボトルが開けられない
・ひねるタイプのドアが開けにくい
・物をよく落とし、壊す
・食事を摂るのが難しい
上記の例は下に行くほど握力が低下しており、箸の使用が困難であれば代替案もありますが、スプーンを持つことも困難であれば自助具や時に介護が必要になってしまいます。
握力は健康な人でも40代前後には大きく低下する傾向にあります。
なんとなく握力が低下したと感じた段階で、なるべく早くからリハビリを行うことが不可欠です。
握力の低下は「心臓病」などの発症の目安にもなる
病気によるマヒやケガの後遺症がなくても、加齢により握力は低下する傾向にありますが、
病気のサインや発症リスクの高まる要因としても「握力の強弱」が注目されています。
最近では、2015年5月14日にカナダ・マクマスター大学が主導した国際研究チームは、握力が弱いと寿命が短く、心臓発作や脳卒中のリスクが大きくなることが分かったとの発表が、医学誌「THE LANCET」発表されました。(詳しくはエイジングスタイルでご紹介しています)
細かな因果関係はまだ研究途中であるものの、握力の低下は全身の筋力や体力低下の目安だけでなく、心臓病や脳卒中といった疾患と何らかの関係状況にあります。
また、短期間で握力が低下した場合、脳卒中の初期段階に見舞われているサインともなりえます。
その他では頸椎ヘルニアの症状が進行している場合にも握力の低下がみられます。
単に加齢により握力が低下したのかな?と思わず、早めに受診することが大切です。
握力低下のリハビリには、「手先」「腕力」の両方を意識する
握力の強弱には腕力も関係しています。
たとえば重いものを持つときをイメージしてください。
しっかりと重い買い物袋を持つときは、手のひらや指の力、手首から肘までの力がきちんと連携しています。
握力が低下した場合のリハビリは、指先や手のひらの運動だけでなく、腕の動きも意識して行う必要があります。
◆手先のリハビリテーション
・負荷が軽い状態で手のひらの開閉(グーパー運動)
肩の高さに手を挙げて、肘をまっすぐ前に伸ばし5秒ほどかけて手のひらを開く。
その後5秒かけて手のひらを閉じる。一日30回程度から始め、少しずつ負荷を増やす。
空いた時間に少しずつ取り入れてもOK。
お風呂に入ったときに手のひらを温めつつ水圧を利用して負荷を増すことも効果的。
・ゴムボールやハンドグリップを使った手のひらの開閉
先ほどのグーパー運動と基本的には一緒ですが、器具を使う分効率よく握力が鍛えられます。
いきなりハンドグリップを使用するとさらに手を傷める原因にもなりますので、リハビリ初期はゴムボールなどの柔らかい素材のものから使用しましょう。
・指先のトレーニング
片手の指を曲げ、反対の手の指へ絡めて軽く引っ張ります。
まずは指一本対四本で、四本の指全体に一本の指をひっかけるところから始め、指の数を増やしていきましょう。
この時、本数の少ない方の指で引っ張る力をかけます。
本数の多い方の手は、あくまで補助として力をかける程度に収めます。
両手で強く引っ張り合わず片側のみ力をかけ、万が一痛みを感じたら中止しましょう。
◆腕力のリハビリテーション
・ペットボトルダンベル
まず、ペットボトルの中に水を入れ、肘の高さで前に伸ばし両手に持ち、手のひらを天井側にします。
ゆっくり時間をかけて、肘を曲げ伸ばしします。
肘から手首までの筋力増強だけでなくペットボトルを握るので、握力に直接アプローチもできます。
肘の曲げ伸ばしに不安がある人は、手首の上げ下げや回転だけゆっくり取り入れてもよいでしょう。
なお、最近では真ん中がくびれたデザインのペットボトルも増えています。
このようなデザインのボトルを使うと滑って落とす可能性が少なくなります。
・壁腕立て
肩幅ほどに足を開き、壁に対し20~30センチほどつま先を離して立ちます。
胸の高さ程度に手をあげ、壁に手をつきます。
ゆっくり壁に体重をかけ、前傾します。
この時腰を折り曲げず、足首から頭が一直線になることを想定します。
また、肘を過剰に外側へ開かないよう気を付けましょう。
体力のない高齢者の方がいきなり腕立て伏せをするのは困難ですが、壁腕立ては自重を使い効率的に腕立てができます。
・雑巾絞り
左右の力を別方向にかける「雑巾絞り」は、効率よく手先と腕力を鍛えられます。
濡らす必要はありませんので、しっかり握れるサイズのタオルを使用しましょう。
逆手にする手を入れ替えたり、両手を縦に並べて絞るなど、違う力のかかり方を意識すると効果的です。
リハビリで握力の向上を図ることは、回復後の生活内容にも直結します。
他の部位のリハビリと比較すると、日常的にマッサージやトレーニングが可能な箇所でもあります。
握力低下をなるべく予防するように普段から少しずつリハビリを行っていきましょう。
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