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社会的行動障害とは?行動や感情への影響とリハビリ方法

リハビリの知識

こんにちは、御所南リハビリテーションクリニックです!

今回は「社会的行動障害のリハビリ方法」についてご紹介します。

社会的行動障害の症状では、今自分がいる環境に合った行動や言動が出来ず、自分自身をうまくコントロールすることが難しくなります。
また自覚症状がないことが多く、人間関係にも影響を及ぼす可能性があります。

自立した社会生活を送るために、社会的行動障害の症状や検査方法、大きな支援方法の一つリハビリについてもしっかりと理解してサポートしていきましょう。

 

 

社会的行動障害とは

社会的行動障害とは、行動や言動、感情をその場の状況に合わせてコントロール出来なくなる高次脳機能障害の一つです。

高次脳機能とは、言語や記憶、注意力や感情などの人間が持つ脳の認知機能の総称で、五感から感じた情報を記憶や言語と結びつけ、実際に自身の行動に変換するための高度な脳の機能です。

社会的行動障害は、体に障害があるように見えないので外見からは判断しにくく、言動や行動によって周囲に誤解をまねきます。
家族との日常生活が出来ていても、社会に出たときに感情のコントロールが出来ず周囲に迷惑をかけるなど、社会生活において問題を生じることがあります。

 

社会的行動障害で起こる具体的な8つの症状

 

①感情コントロールの低下

その場の状況判断が出来ず、感情(怒りや悲しみ、情緒)のコントロールが出来ない

②依存症・退行

子供に戻ったようになり、すぐに人に頼り、自身で判断が出来ない

③共感性の低下

相手の立場や気持ちを考えることや思いやることが出来ない

④固執性

同じことをいつまでも続ける、こだわりが強く人の意見を聞かない

⑤意欲・発動性の低下

自分で何をしたら良いのか考えられず、人に指示されないと行動が出来ない

⑥欲求コントロールの低下

何でも無制限に欲しがる、手元にあるお金を全て使ってしまうなど、我慢が出来ない

⑦反社会的行動

盗みやセクハラのような社会的倫理に反する行動を起こしてしまう

⑧抑うつ

憂鬱な状態が続きやる気が起こらず、やるべきことは分かっていても行動に表すことができない

 

 

社会的行動障害の主な原因とは

社会的行動障害の代表的な原因は、次の2つに分けられます。

1)前頭葉の損傷により感情や自分の行動をコントロールすることが困難になる
2)他の高次脳機能障害(記憶障害、注意障害、遂行機能障害)の影響を受けて、二次的に起こる

社会的行動障害はどのように他の高次脳機能障害からの影響を受けるのでしょうか。
記憶障害によって新しい人の名前や顔が覚えられなかったり、過去の記憶を思い出せなかったりすると、対人関係に支障が出てきます。
注意障害によって周りの状況判断が出来ず、不適切な行動や言動でその場の空気が読めなくなってしまいます。
遂行機能障害による行き当たりばったりの行動や言動で、相手をイライラさせたり幻滅させたり、対人関係で支障が出てきてしまいます。

また、脳の損傷により感情・行動のコントロールが難しくなったことで、うつ状態に陥るケースもあります。

リハビリや社会復帰を目指すためには、どのような原因により症状が発症しているのか、見極めることが大切です。

 

 

社会的行動障害に対する代表的な2つの検査方法

社会的行動障害の検査方法は、社会生活や訓練の場面で問題となる行動がどのようなきっかけで起こるのかを記録・分析して検査します。

代表的な検査方法を2つご紹介します。

 

①適応行動尺度検査

人間の行動を分析するときに、その行動が適応しているか否かを測る尺度項目の検査です。

適応行動尺度検査の主な項目は次の通りです。

・社会性や責任感
・自己指向性、仕事能力、家事能力
・経済的機能、身体的機能、自立機能
・薬物の使用、心理障害、性的行動
・異常な習慣、不快な言語習慣、常同的行動、応答能力
・自閉性、反抗的行動、反社会的行動

 

4つの適応行動領域と不適応行動領域(オプショナル)と下位領域から構成される。

コミュニケーション:受容言語/表出言語/読み書き
日常生活スキル: 身辺自立/家事/地域生活
社会性:対人関係/遊びと余暇/コーピングスキル
運動スキル:粗大運動/微細運動
不適応行動 : 不適応行動指標/不適応行動重要事項

 

②S-M社会生活能力検査

人の社会生活能力の発達を測る検査です。
質問内容は6つの領域、130項目で構成され、検査結果は社会生活年齢と社会生活指数によって表され評価されます。

S-M社会生活能力検査の質問内容は、

身辺自立

衣服の着脱、食事、排泄などの生活能力

移動

自分の行きたいところへ移動するための行動能力

作業

道具の扱いなどの作業遂行の生活能力

意志、交換

言葉や文字によるコミュニケーション能力

集団参加

社会生活への参加具合を示す行動能力

自己統制

わがままを抑え、自分の行動に責任を持って目的に方向づける能力

 

質問項目はレベル分けされているので、130項目全ての質問に答えるとは限りません。
該当するレベルで出来ない場合は、徐々にレベルを下げて質問していき結果を判断します。

 

 

社会的行動障害のリハビリ訓練方法

社会的行動障害のリハビリは、他のリハビリのように単純に一定の行動を反復練習する、というものではありません。
まず、自分自身に起きやすい行動障害を把握した上で、その症状が出た場合にどう対処すべきかを本人と一緒に考えて訓練する、という方法を取ります。

 

1)やる気がなく、自発性に問題がある場合

チェックリストを作り、具体的に指示する。周囲は「やる気を出せ」と指導しない。

 

2)感情のコントロールが困難な場合

不適正な行動をとった場合、怒らずにはっきり指摘し、家族、スタッフはその場から離れるか、または本人に訓練室の外に出てもらうようにする。

 

3)行動のコントロールが困難な場合

行動を起こす前に、自分の対応内容を見つめる習慣をつける。原因となる刺激などが判明している場合は、その刺激を避ける。

 

4)自分の症状に自覚がない場合

不適正な行動を避けられたときに褒める、励ます。原因となる行動を周囲が発見した場合は注意を引くようにする。

 

社会的行動障害を持つ人の約3割が攻撃性を持っている(イライラしやすい、暴力的になる)という研究結果があります。
このような感情は「過剰な課題が与えられる」「強く叱責を受ける」などの急激なストレスがきっかけになり出現することが多いのが特徴です。

リハビリ中には周囲からの過剰なストレスを抑えることや、周囲も感情的にならず患者様一人ひとりとじっくり向き合うことが重要と言えます。

 

 

社会的行動障害には周囲の環境づくりと支援、適切なリハビリが必要

社会的行動障害は本人の単なる感情の変化ではなく、症状の1つであることを周囲の人や本人も認識することが必要です。

社会的行動障害への対応は、まず周囲が冷静に対応することが大切です。
患者様の感情や行動のコントロールが出来ないときには、落ち着かせてから物事を進めるように促しましょう。

何かを始める前に一度考えてから行動する習慣をつけるように促し、やり始めると止まらない場合はタイマーで時間設定をしてあげると良いです。

リハビリにおいても出来ないことに目を向けるのではなく、出来たことに目を向けて共有することが大切です。
社会的行動障害を改善出来るよう周囲や家族も協力し、社会生活への復帰に取り組みましょう。

 

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