記憶障害とは?接し方や対策について理解しよう
こんにちは、御所南リハビリテーションクリニックです!
人の名前が急に出てこなかったり、やらなければいけないことをすっかり忘れていたり。
日常のなかでうっかり忘れてしまうことは誰にでもあることです。
そんな生理現象の物忘れとは異なる症状に「記憶障害」があります。
記憶障害とはその名の通り、自身の記憶に障害をきたすこと。
最近のことだけでなく、自身の人生にかかわる一部であっても、その記憶が「抜け落ちる」ように思い出すことができない症状のことを言います。
介護の現場では認知症、そして事故や病気などによる脳機能のダメージが原因であるもの、
ほかにも強いストレスや過労など精神的な負荷が原因で症状が現れることもあります。
単なる「物忘れ」とは異なる「記憶障害」について、その種類や接し方、対策について説明していきます。
「物忘れ」とはどう違う?記憶障害とは
アルツハイマー型認知症や外傷・病気による脳の損傷、強い心的ストレスなどが原因となり、様々な記憶に障害をきたすことを「記憶障害」といいます。
一般的な物忘れであれば「買い物に来たけど買うものを思い出せない」のように自覚があります。
記憶障害の場合は、過去の体験や出来事の記憶自体が抜け落ちている状態なので、本人が「忘れている」という自覚がないのが特徴的です。
一緒に経験したはずの出来事や、人生を送るうえで当然知っているべき記憶について、思い出せないということがあるのならば「記憶障害」を疑いましょう。
具体的には、以下のような症状があります。
・今日の日付がわからない
(単に「8月1日か2日のどちらだったかを忘れた」という形ではなく、「今が何月何日でどの季節だったか理解・記憶できない」といった状況を指します。)
・自分の通った学校の名前など、当然本人が知っているべきことが思い出せない
・何度も同じ事を話す
もちろん上記は一例で、症例には様々なパターンがあります。
記憶障害の種類
記憶障害は主に5つに分類されています。
短期記憶障害
短期間で起きた新しい情報を収容する脳の海馬機能が低下することで、最近の出来事が記憶できなくなります。
たとえば今日の日付や曜日、ご飯を食べたこと、友人と話をしたことなどが記憶として留まらず、覚えてられないのが特徴です。
長期記憶障害
長期にわたって記憶が思い出せなくなります。
たとえば子供時代のことや結婚していること、仕事のこと、家族のことなどがあげられます。
直近の出来事ではなくても、自身の人生を作ってきたさまざまな出来事は、思い出そうとすれば思い出せるケースが多いものです。
ヒントをいくらもらっても、ある部分の記憶もしくは長期記憶の大部分がふいに抜け落ちてしまっているのであれば、長期記憶障害の可能性があります。
エピソード記憶障害
体験した出来事である「エピソード」を、きちんと思い出せないことを言います。
たとえば「昔就いていた職場でどんな仕事をしていたか」といった大きなことから、小さな「さっきご飯、食べたっけ?」といった「体験内容=エピソード」を覚えておくことができません。
一定の範囲内のエピソードが全体的に記憶できないケースや、断片的な記憶はあったとしても、それが全体にどうつながっていて、どんな内容だったのか分からないケースもあります。
手続き記憶障害
自然と体が覚えている日常作業や仕事の作業を忘れてしまうことを言います。
料理の基本的な作り方や包丁での切り方、洗濯物のたたみ方、楽器の演奏や自転車の乗り方など、頭で考えなくてもできていたことができなくなります。
意味記憶の障害
言葉の意味を記憶することができません。
言葉の名称を思い出すことができなくなる場合もあるので、会話に「あれ」「それ」などの指示語が増える傾向にあります。
会話の相手に正しい内容を伝えることが難しくなります。
記憶障害との接し方
たとえば家族が記憶障害となったとき、どう接したらよいのでしょうか。
本人の状況を受け入れましょう
まずは「責めるのではなく受け入れる、安心させる」ことを心がけてください。
忘れていることや思い出せないことが増えてくると「なんで覚えていないの」「言ったでしょ」など、本人を責めてしまうかもしれません。
本人にとっては徐々に記憶が抜け落ちてしまっている状態なので、責められても思い出せず、逆に「もっと忘れたらどうしよう」と自分自身への不安が募っていくことになります。
生活を送っていく中で、まずは周囲が本人の状態を受け入れ、安心感を与えながらサポートしていくことが大切です。
サポートできる環境を整備しましょう
保険や財産など、金銭にかかわる管理は重要です。保管場所や暗証番号などを共有するほか、振込みを引き落としに変えるなどの対応も有効です。
車の運転や鍵の管理、買い物、掃除なども状況を確認しながら、本人の記憶になるべく頼らなくて済むようにサポート体制を組んでいきましょう。
記憶を留めるための工夫も大切です
物の置き場所や予定は忘れやすいことの代表格で、メモは欠かせません。しかしメモ帳を用意しても、そのメモがどこにいったか分からなくなることも・・・。
置き場所を決めてラベルをつけておく、ホワイトボードを使用するなど、誰もが目にしやすいように情報を視覚化しておくこともオススメです。
気になる進行具合と対策
認知症による記憶障害で多いのは、アルツハイマー型認知症の症状です。
認知症の進行とともに記憶障害も大きくなっていきます。
初期症状としては短期記憶障害が多く見られ、進むにつれエピソード記憶、そして手続き記憶や意味記憶などの機能が低下していきます。
記憶障害に対する対策治療としては具体的にどのようにしたらよいのでしょうか。
視覚的アプローチで記憶力を高める
言葉だけで覚えるよりも、目で見た記憶のほうが脳にとどまりやすいといわれています。
「いただいたケーキがあるから食べてね」と言葉で伝えるだけではなく、「『このケーキ』を冷蔵庫に入れておくので食べてね」とケーキを見せながら冷蔵庫に入れるまでを一緒に確認すると、より厚い記憶となり抜け落ちにくくなるでしょう。
反復学習で覚える
新しいことを覚えなければいけないときには、同じことを繰り返すことで記憶が保持できるようになります。
覚えることはできるだけ簡潔にし、同じ環境下で幾度も繰り返していくことで記憶が確かになっていきます。
このとき、五感(視覚、嗅覚、味覚、聴覚、触覚)に訴える要素を交えるとさらに有効と言われています。
例えばメモに書いて貼っておく(視覚)、時間になったらアラームを鳴らして知らせる(聴覚)といったことです。
まとめ
記憶障害が進んでくると、周囲はもちろん、本人も大きなショックを受けやすくなります。
日常生活のなかで大切な記憶が抜け落ちるかもしれないという不安感、もの探しへのストレスなどの負荷はとても大きなものです。
症状が見られたらまず専門の病院にかかり、きちんとしたサポートを受けながら周囲が理解し、安心して生活できる環境を整えていきましょう。
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