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<講演採録> 寝たきり防止の脊椎体操_岩﨑義仁 理学療法士

脊椎・脊髄損傷

11月10日(日)京都商工会議所にて、「寝たきり防止の脊椎手術と寝たきり防止の脊椎体操」をテーマに読売健康講座(日本ストライカー㈱、大阪よみうり文化センター共催)が開催。御所南リハビリテーションクリニックに非常勤医師として勤務いただいている池永稔先生(相馬病院 脊椎外科部長)が講座前半に「寝たきり予防の脊椎手術」をテーマに、同 岩﨑義仁理学療法士が後半に「寝たきり防止の脊椎体操」と題して講演しました。講座後半の岩﨑療法士の講演をご紹介します。

【前編】「寝たきり予防の脊椎手術」(池永稔先生)はこちら

寝たきりは必ずしも “ベッドの上から動かない”状態ではない

まず最初に、実は「寝たきり」と言う言葉は学術用語ではなく、明確な定義もありません。厚生労働省では「おおむね6ヶ月以上病床で過ごす者」とされていますが、一つ抑えておきたいのは、必ずしも言葉通りの“ベッドの上から動かない人”のことを指しているわけではないということです。実際、介護保険申請の際に、寝たきり度の判定基準として意見書で記載する「障害高齢者の日常生活自立度」の中では車椅子を利用される方も寝たきりとされます。

寝たきりになる要因を考えてみますと、1位は脳卒中、2位は骨折・外傷などの運動器疾患、3位が認知症となっています。過去10年間を遡ると脳卒中を要因とするものは横ばいに推移しているのに対し、骨折・外傷は1.5倍に増えたと言われています。この点は、高齢化による影響もあると思います。

「体の麻痺」「骨折のために動けない」「関節痛や腰痛」「治療のため長期間寝込む」「風をひいて寝込んでしまう」こうしたことから、痺れを含む麻痺、疲れ、痛みや意欲の低下などが起こり、寝たきりになりやすいと言われています。インフルエンザで1週間寝込んでしまうと、立った時にふらついてしまうことなども身近な分かりやすい例かと思います。

 

 

まずはセルフチェックを!

さて、ここで質問です。この中でご自身に当てはまるものはあるでしょうか?

  • □ 昨晩(就寝時)と同じ姿勢で起床する
  • □ 朝起きると、体が凝り固まったようですぐには動けない
  • □ 起床して約2時間ぐらいしてからでないと体が回らない(捻じったりできない)、
  • □ もしくは、ほぐれない
  • □ 背伸びをする(ストレッチをする)と背中が突っ張る、
  • □ もしくは、こむら返りする
  • □ 低いもしくは高い場所にある物取ろうとすると背中が突っ張る、
  • □ もしくは、こむら返りする
  • □ 仰向けには寝られない

 

もし一つでも当てはまる場合は、脊椎に問題を抱えている可能性は高いと言えるでしょう。この場合は体操など体のメンテナンスをすることで、これ以上悪くならないようにすることが大切です。

 

知っておきたい体のメンテナンス(体操)

体操と言っても様々です。大前提として、何か痛みがある場合などは、専門家に相談してから取り組んでください。誤った内容ややり方だと却って悪くなることがあります。今回は、まず世の中にある目的や対象ごとの体操と、ご自宅で取り組める体操をご紹介します。

「ロコモ体操(ロコトレ)」バランスの低下、骨や関節、筋肉などの衰えが原因で、「立つ」「歩く」といった移動機能が低下している時、下半身を強化します。下半身を強化する事で脊柱の負担が軽減したり安定しやすくなります。

整形外科で指導されることが多いのが「ウィリアム体操」。骨盤の前後運動、腹筋の強化、背筋・腰回りや太ももの筋肉のストレッチです。この体操は腰椎椎間板障害(椎間板ヘルニア)の急性期とされる状態、もしくは長時間寝た直後や起床後あるいは午前中に無理にやってはいけません。(禁忌)

次に「マッケンジー体操」。うつ伏せの状態から腕を伸ばすなどして腰を曲げたり伸ばしたりするシンプルなものです。ポイントは腰の反復運動と、持続的に刺激を与えることです。

次に、脊椎間を広げることで坐骨神経痛を軽減しやすくなる「腰痛体操(脊柱管狭窄症)」もあります。椅子に座って作業の合間に片膝ずつ抱えるなどするストレッチです。

 

自宅で毎日少しずつ取り組みましょう!

ここからはご自宅でできる「四つ這い運動」「仰向け姿勢」「うつ伏せ姿勢」の運動をご紹介します。それぞれ「起床後あるいは午前中でもやりやすい」「ベット上でできる」「脊柱ならびに骨盤・股関節・膝関節(下半身)の柔軟性を高めやすい」「脊柱に負荷(重力)がかかりにくい」「毎日して欲しい体操(姿勢)」というようなコンセプトの体操です。

四つ這い運動(図1)

ベッド上でやってみましょう。クッションになるため安全に取り組むことができます。腰は股関節、骨盤、腰の3つに柔軟性がないと腰を痛めやすくなります。肩は90°、頭はおへそをのぞき込むましょう。すると背中は丸くなります。次は反対に天井を見るように頭を上げます。この時、お腹のチカラを抜いて落とすと背中が伸びます。この運動をゆっくりと、繰り返して実施します。この運動は決してお腹を出す、もしくは背中を丸める運動ではありません。頭の動きと一体で背骨が続くイメージで動かすことが大切です。

図1 ※クリックすると拡大されます

 

仰向け姿勢(図2)

仰向けになる時に好ましいのは「立った時にも同じように再現できるよう姿勢」となることです。通常顔は5°程度傾いているため、仰向けになった時には頭の下に枕を入れて角度を調整します。腰が痛い方は、仰向けで足を延ばしづらいと思います。その時は、片脚ずつ少しずつ曲げ伸ばしを繰り返しましょう。ある程度できる場合は両膝をかかえる、もしくは右足を伸ばしたまま左膝をしっかり伸ばすなど、左右交互に繰り返します。

図2 ※クリックすると拡大されます。

うつ伏せ姿勢(図3)

枕を胸の下に入れて、肩の位置はそのままにお尻を後ろに下げます。こうすることで腰の牽引になり、股関節、膝関節の柔軟性が高まります。これを繰り返し、ある程度できるようになったら、肘這いになりましょう。赤ちゃんがハイハイするようなイメージで、股関節、膝関節を伸ばします。

図3 ※クリックすると拡大されます。

 

さいごに。一番の薬は運動習慣をなくさないこと

以上3つの運動をご紹介しました。さまざまな体操があり、それぞれに長所や短所があります。寝たきりを予防するうえで大切なことは、体のメンテナンス、運動の習慣です。水と健康はたタダ(無料)と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、今は水は買って飲む時代になっています。健康も同じで決してタダでは手にはいりません。一番の薬は運動習慣をなくさないこと、ぜひ毎日、少しずつ継続してくださいね。

 

  • 【Profile】
  • 岩﨑義仁(いわさきよしひと)
  • 御所南リハビリテーションクリニック 理学療法士
  • 理学・作業療法士養成施設等教員研修修了

【前編】「寝たきり予防の脊椎手術」(池永稔先生)はこちら

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