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失語症のリハビリ方法とは?自然な会話を取り戻すポイント

リハビリの知識

こんにちは、御所南リハビリテーションクリニックです!

今回は「失語症のリハビリ方法」についてご紹介します。
言葉をうまく使うことができない「失語症」は多くの場合が後天性であり、発症直後のご本人は混乱して、気持ちの変化が激しくなることもあります。「自分はずっとこのままだろうか?どれくらいまで良くなるのだろうか?」と不安が大きい障害の一つです。

ですが、周囲の協力やご本人の努力次第で、失語症は少しずつ回復する可能性があります。
失語症のリハビリ方法とご本人や周囲の人たちの心がけたいポイントについて知っていきましょう。

 

 

「失語症」とは言葉をうまく使えない症状

「失語症」になる原因は、その約9割が脳卒中の後遺症といわれています。
人間は左脳に言語をつかさどる部位を持ち、その部位に損傷が起きると、言語をうまく使うことができません(一部の左利きの人の中には、右脳に言語をつかさどる部位があるケースもあります)。

脳卒中によって言語をつかさどる部位の脳の血流が阻害され、脳組織が損傷すると失語症を発症しやすく、また外傷の影響でも失語症になることがあります。

失語症には次のような特徴があります。
・話す能力の低下:言葉が浮かばない(頭の中の引き出しから出せない・探せない)
・聞く能力の低下:ことばが理解できない
・読み書きの能力の低下:文字が理解できない、書けない
※重症度や症状は様々
※口を動かす筋肉や声帯に問題はない

なお、言語障害には失語症以外の症状もありますが、それぞれ原因が違うため、リハビリの方法は異なります。
・ストレスや神経障害の影響で声帯などがうまく動かせずに声が出せない「失声症」
・同じ言葉や最初の言葉を繰り返してしまう「吃音(きつおん)」
・脳卒中や外傷の影響で、口唇や舌が動かしにくくなる「運動障害性構音障害」
・経験したことを忘れる「記憶障害
・判断力の低下や物忘れなど「認知症」

失語症は声帯や口唇など「声を出す機能そのものに障害はない」ことに注目しましょう。

 

 

急性期から言語聴覚士とリハビリを始めることが重要

「失語症」は一般的にリハビリ期間が長期にわたることが多いです。
発症後できるだけ早期から言語能力を評価し、個々に応じた会話支援ツールなど意思の表出手段を確立することで、周囲の方々とのコミュニケーションを取りやすくすることができます。

そのため、急性期の段階から体調の回復度合いを確認しながらリハビリを始めることが重要です。

失語症のリハビリは「言語聴覚士(ST:Speech-Language-Hearing Therapist)」が担当します。
医師や言語聴覚士は「標準失語症検査」という検査を患者様に行い、その結果をもとにリハビリ内容を決定します。

 

■失語症のパターン

失語症には2つのパターンがあります。
(損傷した部位の名称を取り「ブローカ失語」「ウェルニッケ失語」と表記することもあります。)

運動性失語(ブローカ失語):言葉は理解できるものの、文の構造をうまく組み立てられず、単語や短文でしか言葉が出てこない
感覚性失語(ウェルニッケ失語):言葉の理解が難しく、発話はなめらかだが意味の通らない言葉を話す

なお、脳の広範囲に損傷が及んでいる場合、「運動性失語」と「感覚性失語」を併発することもあります。

これを「全失語」と呼び、言語機能すべてに重度の問題がみられます。そのためリハビリにはさらに時間を要するほか、右半身のマヒも伴うことが多く、長期的なリハビリが必要になります。

失語症のリハビリは、それぞれのタイプに合わせてリハビリをする必要があり、まずは無理をしないように注意しながら身近な言葉を使用し、失語症の症状を把握することから始めます。

 

■急性期のリハビリ

急性期のポイントは「コミュニケーションを取ること」を最重要視し、文章の組み立てや細かな理解はそれほど重要視しません。

例えば、顔を合わせたとき毎回挨拶を行います。
時間帯と違う挨拶が患者様から返ってきても否定せず、まずは挨拶の言葉を思いだすことに注目します。
また、挨拶の言葉が返ってこなくても「こんにちは」と言われて微笑むなど、「こんにちは」は挨拶として使う言葉だと認識した場合は、そのまま次の会話を続けます。

 

■回復期/維持期のリハビリ

回復期/維持期のリハビリは次の4つのパターンを組み合わせて行います。
・聞く:短い文章やテレビのニュースなどを聞いてもらい、その内容について答える
・話す:絵を見せて名前を言う、言葉を復唱する、まんがの内容を説明する
・読む:簡単な文や文章を読んでもらい、その内容について質問する
・書く:一日のリハビリの予定をメモしたり、短くても日記を毎日書く

もちろんここに上げたリハビリ内容はごく一部であり、患者様の症状や回復度に合わせて内容を変化させます。

 

 

家庭で気をつけるポイントは「焦らず」「大人として接する」「言葉以外も交える」

回復期以降、ご家庭でのリハビリを行う際にはご家族の協力も必要になります。
言葉はコミュニケーションを行うためのツールですので、失語症からの回復にはコミュニケーションが不可欠です。
ぜひ少しの時間でも毎日コミュニケーションを取りましょう。

ご家族側が気を付けてあげたいことは次の通りです。

■過剰に先回りしない

患者様に早く回復してほしいから、と次の言葉を先回りして言ってあげるご家族がいますが、時と場合によっては患者様の意志を無視してしまうことに。
ワンクッション考える時間を持ったうえでご本人が困っているようであれば、イエス・ノーで答えられる質問や選択肢のある質問に置き換えてあげるとよいでしょう。

 

■思考能力は低下していないことに注目

認知症と違い、物事の判断力自体は低下していないのが失語症です。
簡単な言葉を使おうとするあまり、子供相手のような会話をするのは望ましくありません。あくまで大人として接することが大切です。

 

■ゆっくり時間をかけて会話をする

回復期後半になると時間をかければある程度の会話は成立しやすくなります。
時間に余裕をもって会話をするように心がけましょう。

 

■ジェスチャーを使う

言葉だけがコミュニケーションを取る方法ではありません。
患者様が言葉に詰まっているとき、ジェスチャーを混ぜることで言葉を思い出すことがあります。

 

■実物/写真/イラストを組み合わせる

「テレビ」などの単語は覚えているものの「テレビ見る?」と話しかけてもイマイチ反応が悪いときには「『テレビ見る?』と話しかけながらテレビをつける」など、実際にイメージが沸くものを見ると理解を促しやすくなります。
写真やイラストでも同様の効果が期待できます。

 

 

リハビリや工夫次第で、コミュニケーションが楽しくなる

発症前にバリバリ働き、活動的な人であれば、発症後のコミュニケーションがうまく取れない自分をもどかしく感じるでしょう。

症状の程度によってはリハビリが数か月に渡るほか、急性期のリハビリと比較すると回復期・維持期のリハビリ結果は緩やかに回復するため、不安な生活を過ごすかもしれません。

そんな時は、無理に発症前の状態に戻そうとするのではなく、趣味や好きなことの話題など、今のコミュニケーションを楽しめる工夫を取り入れることが大切です。
言葉をうまく使うことが目標ではなく、周囲との意思疎通を図ることが、最終的な目標だと忘れないようにしましょう。

 

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